出産の記録 (6)

 16:00
悲鳴をあげながら部屋に戻り、分娩台になるベッドによじのぼり、助産師さんに手伝ってもらいながら破水しているかの内診。もうなされるがまま。破水していたことから、助産師さんが何かを取りに離れたときに、強い陣痛が。これがもうどうなっているのという痛さで、わけがわからない。「どうしたらいいの!」と大声で叫んだ。そんな自分を客観的にかわいそうだと思ってしまった。
もうよく分からないけれど、とにかく急に周りが騒がしくなった。ばたばたと助産師さんが周囲に集まってきている感じがして、見えていないけど5人、いやもっといたような気がする。痛みが来たとき、いきんでいいのか分からなくて、「どうしたらいいんですか! いきんでいいんですか!」と叫ぶと、「できるならいきんでいいのよ」。そうなのかと理解して力を入れると、記憶が曖昧だけど、赤ちゃんの頭ががしっと股にはさまった。文字通り、ほんとに何かでっかいものが出口をふさいだ感じがした。この感覚が、お産でもっとも衝撃的なことの1つだった。痛いのか違和感なのか恐怖なのか、何なのか。「もう頭出てるんじゃないの!?」くらいの感覚だった。
ここからは陣痛が来たらいきむ、引いたら極力休めるように努めるの繰り返し。通常1時間はかかるらしいこの時間が、私は30分くらいだったよう。陣痛は間をあけずにどんどんきた。横向きに寝ていて、手はベッドの柵を握っていた。長くウーンといきむよりも瞬間的に力を加えた方がいいらしく、「息を止めてー」と助産師さんに力をためるよう合図をもらった。私、このいきみが強かったのか、夫曰く顔は赤を通り越して青黒く、ひたいに青筋がたっていて切れそうに見え、「このまま死ぬんじゃないか」と思ったらしい。そしていきんで波が去ると毎度吐いた。3回以上吐いたと思う。こんなふうに胃から出てきちゃうなら、さっきあんなに食べるんじゃなかったと苦しい中で思った。
陣痛の合間は緊張と痛みと恐怖で全身をブルブル震わせていたけれど、助産師さんに「手の力を抜いて~」とか声をかけられて、なんとか呼吸をして落ち着こうとした。ほんの数分の合間に、不思議と少しは休まった。「もう赤ちゃんの頭が見えてますよ」とかも言われて、どうやらいきむと頭が出てきて、力を抜くとまた引っ込むという状態になっているらしい。
いよいよ「あと数回だと思います」。頭が出て、次のいきみで何かゴツゴツしたものが出てきた感覚。午後4時43分、ついに生まれました。ベビーは頭が出た状態ですでに泣きそうになっていたらしい。全身が出てくると大きな声で泣いた。そして私のおなかの上に載せてくれた。ベビーはすっごく温かかったのと、重かった。