カテゴリー別アーカイブ: 山行報告

初めての親子登山をエッセイに

僭越ながら、子連れ登山のデビュー戦について、エッセイ風で記事にさせてもらいました。

山と溪谷オンライン お母さんは山おんな① 生後4か月。泣いたら下山!? 春日井三山の弥勒山で、赤ちゃん連れ登山はじめました

https://www.yamakei-online.com/yama-ya/detail.php?id=3999

山ガール世代が、ここ数年でどんどん親になっている…とは聞きますし、実際にそうだなと思います。しかし山にハマった人が、子どもがいると登山が続けられない、実際に結婚出産ってどうなの、と思うのも事実。「出産しても山に行けるんですか」と山で会った若い女性に聞かれたことが何回かあります。そんな親子登山に不安を感じるパパママの背中を押せるといいなぁと思います。私の個人的な経験を綴っていますが、あたたかいドラマもあって、読み物としても楽しんでもらえたら幸せです。

登山部あさひ×マリベ 上半期の活動

霊仙山のふりかえりが不十分だから、書いておこうと思ったら、登山部あさひ×マリベの上半期の振り返りになってしまった。振り返りすぎ~! 霊仙山の登山については、また別投稿で… 金曜と月曜に原稿〆切があるのに、またやれてない。やらなきゃ~😂

1月に金華山、3月にミニクライミング、4月に霊仙山、そして6月に読図講座、やれたら7月にもハイキングをしようと思っている。登山部の親子を対象に、参加枠が余れば私の告知を見てくれた親子も。毎回感想をもらっていて、ハッとする意見や、すぐに答えられない質問もあり、引率側も学びが多い。私の、案内する側の経験の少なさでもあり、単純に新しい人との出会いの効果とも思う。

そもそも登山部あさひに関わりだしたのは、まだガキ大将登山と呼んでいた頃の最後の年で、いきなり唐松岳の1泊2日山小屋泊に同行した。この頃は登山部の子どもたちに驚くことばかりだった。

いちばん小さな子で小3がいたのは度肝を抜かれた。高校生の3人はきょうだいなどをサポートする役割をしつつも、夜は持ってきたよりどりみどりのカップラーメンや担ぎ上げた水やお菓子で、中学生3人らも混じってパーティ。小学生の子どもたちも親からもらったお小遣いを、どんなお土産に使おうと考えて、山小屋の缶バッジやお菓子などを買っていた。しっかりしてるなあ。

我が子と登るときは、思うように行動できないのが常なのに、ガキ大将登山の子たちは「泣かない」「荷物も持つ」「ほとんど遅れない」「雨が降ってきても文句も言わない」「山小屋のご飯もちゃんと食べる!マジで!?」「ご来光を見るために4時起床!?」……などと神童と思うようなまぶしい子たちばかりだった。

そんなグループが昨年「登山部あさひ」に改称し、今年はスタッフとして引率や企画に関わらせてもらっている。本当はね、昨年もやろうとしていたけど、勇気と天気が合わず。

当初から「マリベさんも山の企画してほしい!」と言われていたものの、企画して募集しても、登山部を主催する安藤さんのようには参加者が集まらない。最初はそんなもんだと思っても、自分のための山もあきらめたくないし、育児さなかのワークライフバランスも崩したくない。本当にやる? できる? とは思ったけど、期待には応えたいし、山岳コーチ2の資格もきっと役立つだろう。今年は好天にも恵まれて、調子よく実施中。

企画するときには、私なりに工夫していることがある。ただ山を案内するのではなく、学生の頃に身につけたワークショップ的な手法を取り入れたり、山岳会女子として訓練してきたクライミングの技術や、登山ライターで培った視点を生かしたりすること。だから、シールラリーやクイズしてみたり、親子クライミングしてみたりと、登山にプラスアルファの体験をしている。参加者にウケるかどうかは、試行錯誤中(笑)でもワークショップ的な遊びが楽しくないはずがない。

最近は、どうやったらワークショップっぽく山を案内できるかな?と想像しながら、日常的な取材をしていることも多くなった。

ミニロッククライミング!大成功

登山部あさひ×マリベの初開催
ミニロッククライミング!大成功

親子で、本格的なロッククライミングを体験する、めずらしい企画を構想&実施できました。参加者の声からも評価があったけど、主催した自分自身も、とてもすばらしい、貴重な体験となりました。21人の参加者+6人のスタッフ+見学者2名。総勢29人の皆さん、ありがとうございました!

【子どもの感想】

その場で記入してもらったものを集計。
投稿に画像で貼り付けたので、ご参照ください

【保護者の感想】

具体的な声を一部編集して記載します!

「岩を見た瞬間、子供も自分も無理だろうと思いましたが、ロープの安心感からか意外に登れてびっくりしたのと、攻略していく楽しさを感じました」

「子どもたちの2回目のトライはみんなやる気が上がって、見ていて頼もしかったです」

「大人皆が、登っている子どもたちに素直にすごい!ナイス!と声をかけ自然に拍手があがる。これは子どもたちは絶対に楽しい、嬉しいことだと思いました」

「見ているのと、やってみることの違いを体感できて、すごく良い経験になりました」

「クライミングには、原始的な、頭と手足全体を使って身体を動かす楽しさがあると思いました。岩壁を登る、という普段できないことをやる特別感や達成感も」

「行きたくないと後ろ向きで、当日も登らないで帰りたいとぼそぼそ言っていたのに、スルスルと登ってしまい、最後にもっと大きな岩を見たときに登ってみたいと前向きな発言をしたことに驚きました。ボルダリングよりもクライミングは怖いな〜と言ってましたが、やってみたらロープもあるし安心したのかも」

「息子は直前まで少々行き渋ってましたが、なんとも晴れやかに自信に満ちた表情で帰宅しました。貴重な体験をさせて頂きありがとうございます」

「ハーネスをつけるアクテビティは最近いろいろなところにありますが、やはり人工物。何か物足りない感じ。今回は自然の中でのクライミング。感動しました。ケガや事故のことを考えると、このような企画はかなり厳しいと思いますが、次回も参加したいと思います」


開催できたことそのものが、 本当に貴重な時間だったと、皆さんの感想を受けても感じています。当日晴れてくれたこと、岩が乾いていたこと、寒すぎず暑すぎなかったこと、ケガや事故はなく、無事に終えられたこと。いや、これ大成功ではないのか⁉️

構想を始めたのは、昨年の夏。 時間かけて準備してきてよかった! まずは皆さんの感想から伝わる感動をシェア。

そしてさっそく次回も妄想しちゃいました。でもその前に、別の冒険登山もやりたくなった! 参加してくれる方がいてこそ、継続できるし、私も面白くて役立つ企画を考えたい。 いろんな登山体験を皆さんと一緒にやれるように、私の実績、情報発信なども大事になってくると思います。応援よろしくお願いします!

マリベ登山教室、金華山

今年の挑戦!?マリベ企画で登山教室、第1回できた!

2023年から現「登山部あさひ」の活動に加わり、キッズたちと唐松岳や国見岳などに登った。親子対象のスライドトークの機会もいただいた。主催の安藤さんが認めてくださり、2025年は、マリベ企画の登山や安藤さん企画での講師をさせてもらうことに。(ありがたいことだ…!)

1月26日は、私や幼児さんも含めて5組15人で、岐阜市の金華山に登ってきた。

昨年も2度ほど計画したけど、雨で中止になっていて、今回は天気の心配はまったくなく、暖かくて防寒着が荷物になるくらい。金華山は長良川から立ち上がる独立した岩山で、晴れればすばらしい展望がある。こんな日は、入館料200円を払っても、天守展望台に登る価値あり! 360度まわって、濃尾平野~揖斐の山々~東濃の山々~伊勢湾~三重の山まで見られた🏔´-

岩場では、高いところが苦手な子が「怖い」という場面もあったけど(あとで聞いた)年中さんから小学5年生まで連れだって、岐阜城の石垣さがしをして、お決まりのみたらし団子でしめてきた◎


  • 団体登山の楽しさやパワーはいいことなので、うちの子(年中と小3)も参加させた。講師が子連れなんて⁉️😂令和スタイルかな?
  • 読図の需要があるので、「今いるのは山と谷どっちでしょう?」クイズした。そこはたまたま山(尾根)だったので、「山登りに来たんだから、当然山でしょ」って返答で、そっか、なるほど(笑)尾根は太陽が当たって明るい、谷は斜面で暗く最後が急登など、特徴も伝えた。
  • 今回は、山上で石垣を10か所探すという、シールラリーをやった。やらなくても企画は成立しそうだったけど、石垣さがしをしても、10時スタート→14時下山できた。ちょうどよい活動量だったかな? ただ人数多いので、ちょっとバタつく場面あり。
  • 「足が痛い」と言う子は何人かいた。いい運動、非日常の体験になった証拠だな!☝

安藤さんは、「子どもたちの変化が大事」と言う。ただ楽しかった、疲れただけでなく、登山体験を通して、変化=成長はあったか? それがなければ続かないし、それがあるから続いていると。

私は公認スポーツ指導員(コーチ2)の資格取得中。その変化とは、私の中では「できた!」という喜びや感動と思ってて、それを実感できるようにサポートしたい。子どもが生まれてから、ずーっとお世話になってきた金華山。コーチの一歩をそこで踏み出せたなら嬉しい。

前穂高岳・屏風岩雲稜ルート

この秋、アルパイン3部作

7月、小太郎岩であぶみトレ、9月、御在所岳の中尾根と、三ツ峠山マルチを日帰りで登りに行き、10月にかけては本チャンとして北アや八ヶ岳で3つの岩峰に行くことができた。なかでもいちばん大きかったのが、北アルプス前穂高岳の北尾根末端にある、屏風岩東壁、雲稜ルートだった。

私が屏風岩に行くなんて本気?

上高地から横尾に行き、涸沢に向かう途中の登山道で左手に見上げるたび、こんな大岩壁を登る人はどんなすごいクライマーなんだろう。縁のないルートだと思っていたので、ふわっと「1泊2日で本気で考えてみません?」と言われたときには、何を言っているんだと思った。2か月後くらいの日程を仮で決めた翌朝「あれは夢だったのかな」と思ったが、そうでもなかったらしい。

たまたまあぶみトレをしたのが大きかったと思う。屏風岩雲稜ルートは人工登攀のピッチがあるので。何でもやっておくと役に立つ。

日程を決めても、雨が降ったり、家族みんなウイルス感染したり、仕事の都合がつかなくなったりと、必ずしもうまくいかないものなので、本当に行けるかなぁとは覚悟していた。しかし天気がよく、何事もなく当日を迎えた。

屏風岩雲稜ルートの重さ

屏風岩雲稜ルートを目指すギアは、普通のクライミングの比でなく重かった。人工ピッチのためにヌンチャクは各自13本、ロープは60mハーフ、あぶみ1セットなどを用意した。軽量化でテントを省略してツエルトで寝たけど、それくらい絞って正解だった。欲張って、屏風の頭に抜けることを想定した計画を立てたので、帰りのバスに乗れず、沢渡まで釜トンネルを越えて歩くことになり、最終的に2日間で52kmも歩いた。車に戻れたのは深夜0時を過ぎていて、帰りはコンビニやSAを通るたびに10分仮眠するほど眠かった。

それでも自分たちは山ヤなので、できれば同ルート下降ではなく上に抜けたくて、そういう計画を立てていた(実際には現場の状況から上には抜けず、同ルート下降したけど)。終バスも終タクシーもないと分かっても、「まあ歩くしかない」と思うだけだったのは、最初から歩くことを想定して、平湯ではなく沢渡に車を置いたところにも表れている。

縁あって、3つのルートへ

雲稜ルートのあとは、錫杖の岩場で注文の多い料理店(と左方カンテ)、先日は八ヶ岳の大同心雲稜ルートもトレースすることができた。これすべて10月。先輩方は、マリベがリードしたのかと聞いてくるけど、左方カンテ以外はしてない!(笑) 雲稜ルートはとにかくスピード重視で、完登することが最大の目標だったので、私がリードしないほうが成功率が高くなる。注文は現地で見て迷って、なんか自信が持てず。大同心雲稜は激ムズだった(笑)

このなかで、次に行ったら私もつるべで登りたいと思ったのは注文。見張り塔からずっとも、行くまでは自分には縁がないと思うルートの一つだったけど、来年は挑戦したいと思った!

泊まりで山に行って留守するのを文句言わずに許可してくれる夫にありがとう~。子どももときには淋しいかもしれず、ぜったいに事故ケガなく帰らなくてはと、思っています。

東谷山親子ハイク実施しました

しだみ古墳ミュージアム
「東谷山で親子ハイクにちょうせん!」

4月下旬、一般を募ったハイキング教室の講師をしました。主催は名古屋市守山区にある「しだみゅー」です。ここは国指定史跡の「しだみ古墳群」があって、それを題材にした博物館が5年前くらいにオープンしています。

管理するエリア内に東谷山198mもあって、国指定の重要な古墳3基や、古墳の上に建つという全国でも珍しい神社(尾張戸神社)があります。今回はその山で、親子登山に挑戦しましょう!という企画でした。

しだみゅーには「子どもが楽しめる資料も作ります!」と見栄を張ったので(笑)A4二つ折りの資料、両面でイラストマップとビンゴカードになるものを制作。今回も我ながらよくできた(笑)山の地図を3Dっぽい鳥瞰図で描き起こすのは、簡単ではなくて、建築の実習で、模型作ったりパース描いたりした経験……絵心にプラスでそうした感性がいるかなと。「分かりやすい!」と喜んでもらえて、当日も地図を活用できたので、作ったかいがありました。

ハイキングはどうだったかというと、トラブルというものが全くなくて、とても完成度の高いイベントになったのではと、ホッとしました。参加親子は30名。東谷山に登ったことのある親子、まったく登山が初めての親子も、数組いました。時間が読めなかったけど、予定通り約2時間で下山完了! 参加した子どもたちがよく歩けていました。

地図にも入れた愛知用水に反応している親子が(笑)古墳もそうで、小3くらいの社会科でちょうど学ぶそうで、「タイムリー!」と好評。うちの小3は古墳を知らないから、住んでいる地域によって学ぶことが違うんだろうな~。

GW春合宿 前穂北尾根~奥穂高岳

昨秋に会の先輩と計画する予定だったけど、先輩が仕事で内臓にダメージを受ける大怪我をしてしまったために白紙となっていた。その後じょじょに復帰を始めた先輩と、初冬に御在所のヴィアフェラータ~富士見尾根に行き、岩登りの感覚をリハビリ、私はアイゼンで2ピッチリード。

1月と2月にはどちらも1泊で西穂高岳と将棊頭山~木曽駒ケ岳へ。内容は歩きの積雪期登山だけど、厳冬期というだけで活動が厳しく、寒さに耐える、装備の多さ、冬の生活技術、体力など……。西穂のほうは岩が露出しアイゼントレに最適な内容。木曽駒のほうは累積2100mの高低差に歩きは24kmもあり、どちらもアルプス3000m級の格別なものがあった。晴天だったので初めて一眼レフでの撮影にもトライできて満足した。

3・4月は自主トレで、さてGWどうしようかというときに、なんとなく前穂北尾根を再度提案してみると、まだ体調は万全ではないものの、小屋泊にする条件で話が進んだ。全日程で約束された晴天だったのが後押しとなったのは間違いない。

1日目涸沢ヒュッテ泊、2日目5峰~前穂北尾根~1峰~吊尾根~奥穂高岳~穂高岳山荘泊、3日目下山と計画通りに登ることができた。ただトレーニング不足は否めず、登攀の前夜は眠れないくらい緊張や不安があった。前穂北尾根は入門ルートと何を見ても書いてあるけど、冬靴でアイゼンを履いてピッケルをぶら下げながら登る状況は全然入門ではなく、何とか無事に終えられて安堵した。

ロープを出した3峰で、ハーケンベタ打ちのコーナーに先行者が進んだように思ったので、ピッケルでお助け紐を引き寄せてまで追いかけて登ったらそれは4級の(難しい)ルートだったという失敗をして凹んだり。もっと手前で「難しすぎる」と疑問に感じるべきだった。3峰の頂上に出る直前も冬装備では怖くて、「ほんとにこのルートで合ってる!?」と探すが代替のルートがなさそうで、覚悟を決めて突破した(先輩が)。2峰と1峰は疲労で体が重く、難しくないだろうけど気が抜けなかった。※前穂北尾根、夏にフラットシューズなら、もっと余裕があって登れるんだろうか!?

懸念だった吊尾根の縦走は、幸い夏道が8割以上出ていて危険箇所が格段に少なく、アイゼンを外して歩けたので体力も精神力も回復。時間は押しても不安感は和らいだ。後続にずっと横浜山の会の4人パーティがいて、恐ろしい穂高から小屋までのグサグサの雪壁も一緒に下った。最後に穂高岳山荘で笑って別れた。

ケガからの復帰となる先輩に、よく前穂北尾根OKしましたねと聞いたら「いつも見てるチャレアルの表紙のルートだから、行ってみたい気持ちもあったよ」とのこと。たしかに国内屈指の名ルートを残雪期に登れた達成感は大きかったけど、疲労なのか2週間以上体のどこかが痛くて、最近ようやく元に戻ってきた気がする

不完全なイグルー

実際の山行で初めてイグルーを作って泊まったけど
不完全なイグルーになってしまった、の巻

先々週のこと。(長文なり)米山さんに指導を仰がないといけないと思いつつ、このイグルーをどう解釈していいのかモヤッとして、報告できなかった。「失敗作」というのか、いや問題なくビバークできたのだから失敗ではないか。でも教わった通りのイグルーは作れなかった。恥ずかしい。雪質の問題も大きいけど、「どんな場所(?)でも積雪が50cmあれば作れる」のがイグルーだと教わったのだから、イグルーが完成させられなかったのは私の技術不足じゃないか。

「不格好なその場しのぎのイグルー」に泊まることになったいきさつは、テキストで以下に記録。


1.とにかく雪山でイグルーに泊まろうと思った
今年は再び、自作イグルーに泊まるぞと思うけど「イグルーに泊まるための山行」の機会を得るのが簡単じゃない。雪山泊をシーズンに何回もやれないので、となれば通常の山行で、チャンスがあればイグルー泊してやろう。「やれたら」くらいに思っていたけど、あとから思うと「何が何でもやる」という意思だったかも。

2.イグルー泊は、仲間の理解や同意を得るのが難しい
テント泊しかしたことない人に、「イグルーで泊まれるから、テントはいらないよ」と言って「いいね」なんてなるわけがない。だから今回も通常通り、エアライズ2を準備した。これで1.6kgだ。さらに今回はのこぎりを2本用意した。1本は先輩に渡す予定だ。これで500gくらい

3.どこでイグルーを作るか
行き先は中央アルプスの将棊頭山~木曽駒ケ岳。もともとは霞沢岳西尾根の予定だったけど、土日ともに悪天で終わる可能性が高かったので、より好天が期待できる山域に切り替えた。そのとき、麦草岳~木曽駒ケ岳も候補だったけど、将棊頭山のほうがイグルーにはよさそうと思ってそうした。
東京でどっと降雪したあとの週末で、中央アルプスも登山口から真っ白に積雪が残る。もし樹林限界まで出られたら、吹き溜まりあるかもだし、稜線のほうが藪がなくてイグルー作りやすそうだと思ったが、登攀具がないとはいえ全装を担いで標高差1800m(将棊頭山まで)はあまりに厳しく、標高2300m付近のやっとこ平というシラビソ林で、時間的に行動を打ち切ることに決めた。
歩きながら森を観察していると、笹だらけ。積雪は50cm以上はあるけど、こんなに笹がひょいひょい出ていたら、雪のブロックなんか作れるイメージわかない。笹の出ていない雪だまりはあるんだろうか。

4.やっとこ平の雪
15時頃、やっとこ平と思われる平原着。あっちの平とこっちの平と、2か所を見比べて、より積雪が深く、開けた雰囲気のほうを適地と見定めた。積雪は腿まで潜るので、けっこうある。でも雪が柔らかすぎる。こんな雪でどうやってブロック作るんだっけ。そっと扱えば割れないかもしれない、まずは思い出してやってみよう。
エリアを決めて、中心にトレンチを掘る。それから大きな雪ブロックを切り出す。取り出して置く。ブロックはエッジが立たない感じで、柔らかく、すぐにじゃがいものようになる。手前に寄せようと思っても、硬さが足りないので安定感が全くない。それに自分の足で、どんどん雪に足形の凹みができてしまい、いい形・大きさのブロックが切り出せなかった。
手前に寄せようと思っても、寄せられない。1段目を並べてみて、「天井まで塞ぐのは無理」とすぐ分かった。イグルー6作目の直感かな。

5.天井はフライシートで
掘り下げた雪は、1段目はふわふわすぎて形も悪く、ろくに使えない感じで、2段目はぎりぎりイグルーに活用できるくらい、3段目は笹がツンツン出ていて、カスカスで割れるやつだった。つまり積雪は1mくらいあるけど、最下段は笹混じりだった。
イグルーの形は、中心に寄せられなくて、1段目も2段目も、ほぼ真上にブロックを載せる形。サイロ状だ。一応、こうなったときの次の手を考えていた。その考えは甘かったとあとでわかるけど、テントポールをV字に折って梁として渡し、その上にフライシートをかぶせて屋根にした。フライの端に雪ブロックを置いて重りにした。(スキー山行だとまた違うだろうけど)
やってみると、雪ブロックが不安定かも。風で内側のフライの上に落ちてこないか心配だ。なるべくずっしりしたブロックを置き、隣同士が雪で結合するようにした。また、フライシートの細引きを外に張って、割りばしのペグを雪に刺して、フライにテンションかけて屋根が落ちないようにした。

6.入口が塞げない
同行の先輩はイグルー耐性ゼロなので、もぐらのような入口では酷評されると思った。また米山式イグルーのように掘り下げた内側の壁からブロックを切り出すのが不可能だったため(地盤沈下して壁が崩落しそう)、空けておいた入口部分からもブロックを切り出した結果、大きな出入口にしてしまった。これがうまく塞げなくて困った。
いい硬さの雪質なら、ブロックでも塞げるだろうけど、シート状のもので蓋をするにしても、「シートをどうやって固定するのか?」やはり雪ブロックや、何か重しや細工が必要だ。うまい妙案が浮かばない。もぐらのような狭い出入口よりも、もっと心象の悪い事態になってしまった。
検討の末、銀マットを内側から立てかけて蓋にしたけど、食事をしている頃から風が強くて、ほぼオープンな状態に。銀マットに箸を突き刺して雪壁に固定するなどしても、また風で開いてしまう。とほほ

7.内部の広さ
内部の壁からブロックを切り出していないので、底面が広くない。少し壁を削っても、削りすぎたら崩落するかも。整地して、エアライズ2と同等の面積だった。屋根がドーム状に低くなるテントに比べて、上部空間が広いのはよいと思ったけど、先輩はイグルーの雪壁に慣れないので窮屈そう。

8.屋根が落ちる!?
パラパラと雪が降ってきた。サイロ状にフライシートの屋根。雨や降雪があると最悪のパターン!ということに、今更気が付いた。降雪の重量と、フライを押さえつけている雪の重りと、細引きでテンションした力、これがバランスを取っているのだ。雪の重みで天井が垂れてくる。天井が落ちないかとヒヤヒヤ。
また、中で炊事をすると気温が上がってフライの上の雪がとけ、ぽたぽたと雫が垂れてきた。雨漏りだ。拭き取ったり、フライを弾いたりして、水や雪をどけた。
幸い、風がいい感じに粉雪を飛ばしてくれたようで、夜中も雪は降っていたようだけど、ほぼ屋根に積もらなかった。結果、屋根が飛ばされることもなかった。

9.住み心地は?
以上のように、「扉が閉まらない」「屋根が飛ばされそう」「すきま風や雪が吹き込む」「雨漏り」といった、令和において昭和の日本家屋を代弁するような建築となった。しかし2月の程よい気温の標高2300m樹林帯の半イグルー。あったかかった。比較としては、1月上旬の標高2600m吹きさらしの西穂山荘テント場でのエアライズ2。こちらは激寒だった。コンタクトレンズの液すらも凍っていた。テント内部でもストーブを消すと冷凍庫だった。それでも最初1時間ほど我慢していたら眠れちゃったけど、今回の半イグルーは30分ほど眠れず、そのあとはしっかり眠れた。

初めて泊まった乗鞍岳中腹のイグルーは、3月上旬だったけど二ツ玉低気圧の襲来で暴風雪、そのうえ穴をろくに塞がない状態のイグルーで、出入口からも粉雪が舞い込んでいた。さらに何を勘違いしたのか私は厳冬期用じゃない寝袋で行ってしまったものだから、2時間くらいブルブル震えて全く眠れなかった。あのひどい寒さに比べたら、今回のサイロ状のイグルーは合格じゃないか…!

振り返ってみると、案外うまくいった? ただ入口が銀マットで、フライシートの上のブロックも見た目がいまいちだし、褒められるものだとは思えない。自分がイグルーやれるのか不安を感じる体験だったけど、居住そのものは問題なかった。うーん。やっぱりこれでよかったのかなぁ??