雪山やクライミングを始めて6年目、「これまでの経験を全部出し切った」と思う、私にとって初めての山になった。
35~45度の傾斜で一直線に突き上げる東尾根を登りつめ、小雪庇からアックスを打ち込んで北アルプス・抜戸岳(2813m)に這い上がる。その間一度でも踏み外したらアウト。平坦地がなく、ずっと緊張を強いられ、嫌な想像をしては足元だけに集中するものの、足もつった。先輩と二人、交代で前を歩き、最後の雪庇だけロープを出した。ついに登攀から解放される。「これは会心の登山だ」と感じていたのは私だけではなかったようで、長く強い握手をかわした。
翌朝、周囲の空がブルーグレーからピンクに変化して、5時6分、槍ヶ岳の横に夜明けの朝日が現れた。まるで宇宙。
帰り道にもトレースはなかった。自分の道を切り拓くことが冒険なのかなと感じるものがある。少しは成長したかなあ。これまで山を教えてきてくれた皆さん、旦那ちゃま、ありがとう。
