創造的な登山に必要なこととは

P1230435-2

 明神洞の天井を解き明かす小さな冒険に行ってきた。
 ウソかホントか「奥美濃の黒部」という場所があるらしい。明神山の西面に、明神洞と呼ばれる50~100mの側壁に囲まれたまさに黒部のような回廊があって、15mの明神滝が来るものを拒むように立ちはだかる。沢筋は夏に遡行されているけれど、側壁上がどうなっているかを知る者は、おそらくいない。こんなアイディアを共有してくれたのは、ヒマラヤ遠征やら初登記録やらをもつ隣町に住むスーパークライマーさん。彼は登山を表現活動ととらえて、彼なりの感性で美しさや価値を定義し、オリジナルな登攀ラインを求めて毎日でも地形図を眺めている。
 実際に見上げた明神滝は巨大な門のようで、冷たい水をかけていた。門の左手には急な雪斜面が奥まで続き、ここから仮称・明神洞右岸リッジ(明神山西稜)に上がれそうだ。濃い藪に苦労してリッジに出ると、対岸の稜線など、明神洞の鋭い山谷が目に飛び込んできた。「宮城さん、あれって登れるものなの?」「全部行けるでしょ」。私は雪稜の経験がほとんどない。どうやったら登れるのかはわからないけど、岩ときのこ雪の造形は格別な存在感だった。
 自分が立つ右岸リッジもやせ尾根で、藪とグサグサ雪に悲鳴もの。何しろ前人未踏かもしれない尾根、この先登れなかったらどうしようと不安になる。幸い(地形図通りなんだけど)標高850mくらいから落ち着いた。南岸低気圧からの強い冬型で、1136m山頂に這い上がったときはすでに3日目、帰りも湿雪ラッセルが厳しく、5キロの移動に6時間も使った。
 私の登山歴史上、記録のないルートを行ったのは初めて! 隣町のスーパークライマーさんが道を切り拓いたからできたわけだけど、間近に見ながら同時にトレースできたことは大きな成果じゃないかな。創造的な登山に必要なこととは、第一に相応の「実力」、しかしそれ以上に重要なことは「意志」みたいだ。