前穂高岳・屏風岩雲稜ルート

この秋、アルパイン3部作

7月、小太郎岩であぶみトレ、9月、御在所岳の中尾根と、三ツ峠山マルチを日帰りで登りに行き、10月にかけては本チャンとして北アや八ヶ岳で3つの岩峰に行くことができた。なかでもいちばん大きかったのが、北アルプス前穂高岳の北尾根末端にある、屏風岩東壁、雲稜ルートだった。

私が屏風岩に行くなんて本気?

上高地から横尾に行き、涸沢に向かう途中の登山道で左手に見上げるたび、こんな大岩壁を登る人はどんなすごいクライマーなんだろう。縁のないルートだと思っていたので、ふわっと「1泊2日で本気で考えてみません?」と言われたときには、何を言っているんだと思った。2か月後くらいの日程を仮で決めた翌朝「あれは夢だったのかな」と思ったが、そうでもなかったらしい。

たまたまあぶみトレをしたのが大きかったと思う。屏風岩雲稜ルートは人工登攀のピッチがあるので。何でもやっておくと役に立つ。

日程を決めても、雨が降ったり、家族みんなウイルス感染したり、仕事の都合がつかなくなったりと、必ずしもうまくいかないものなので、本当に行けるかなぁとは覚悟していた。しかし天気がよく、何事もなく当日を迎えた。

屏風岩雲稜ルートの重さ

屏風岩雲稜ルートを目指すギアは、普通のクライミングの比でなく重かった。人工ピッチのためにヌンチャクは各自13本、ロープは60mハーフ、あぶみ1セットなどを用意した。軽量化でテントを省略してツエルトで寝たけど、それくらい絞って正解だった。欲張って、屏風の頭に抜けることを想定した計画を立てたので、帰りのバスに乗れず、沢渡まで釜トンネルを越えて歩くことになり、最終的に2日間で52kmも歩いた。車に戻れたのは深夜0時を過ぎていて、帰りはコンビニやSAを通るたびに10分仮眠するほど眠かった。

それでも自分たちは山ヤなので、できれば同ルート下降ではなく上に抜けたくて、そういう計画を立てていた(実際には現場の状況から上には抜けず、同ルート下降したけど)。終バスも終タクシーもないと分かっても、「まあ歩くしかない」と思うだけだったのは、最初から歩くことを想定して、平湯ではなく沢渡に車を置いたところにも表れている。

縁あって、3つのルートへ

雲稜ルートのあとは、錫杖の岩場で注文の多い料理店(と左方カンテ)、先日は八ヶ岳の大同心雲稜ルートもトレースすることができた。これすべて10月。先輩方は、マリベがリードしたのかと聞いてくるけど、左方カンテ以外はしてない!(笑) 雲稜ルートはとにかくスピード重視で、完登することが最大の目標だったので、私がリードしないほうが成功率が高くなる。注文は現地で見て迷って、なんか自信が持てず。大同心雲稜は激ムズだった(笑)

このなかで、次に行ったら私もつるべで登りたいと思ったのは注文。見張り塔からずっとも、行くまでは自分には縁がないと思うルートの一つだったけど、来年は挑戦したいと思った!

泊まりで山に行って留守するのを文句言わずに許可してくれる夫にありがとう~。子どももときには淋しいかもしれず、ぜったいに事故ケガなく帰らなくてはと、思っています。

【山と溪谷】日本百低山特集

今度はリアルタイムでの告知!

『山と渓谷』2024年11月号(10/15発売中)
決定!日本百低山全国の山のプロと編集部が厳選!

人気の特集が今年も発売となりました。本屋さんでたぶん平積みです! その特集で、私は「26人の山のプロ」に加えていただいて、身に余る光栄!

中部エリアで三ツ瀬明神山、神石山、金華山、関西エリアで御在所岳を担当。ほか、今月も巻末の「季節の山歩き」のトップバッターで下呂市の中根山(下呂富士)を大きく紹介することができました。

全国の著者の多くは、写真家や登山ガイド、自著を持つ編集者、ライターさん。私は肩書きや分かりやすい実績はないけど(今は)、若手&女性というのを強みに、これからも中部エリアから山の楽しさを発信したい。

低山と雪山は自分の得意分野で、今シーズンも冬にかけての今が、年間でもっとも多くのページを受ける時期となっています。12月号・1月号も、たくさん書いたり撮ったりしているので、お楽しみに~

【岳人】2024年10月号秋山

また雑誌の発売が更新されたタイミングで報告を…(笑)告知になってない💦

『岳人』2024年10月号特別編集・秋山で 2山紹介してます。モンベルショップだと、バックナンバー揃ってます! 特集はいつもの紅葉の名山で、私はこの2つを担当しました。

  • 【三重/滋賀】鈴鹿山脈 竜ヶ岳~静ヶ岳
  • 【愛知】豊橋自然歩道 岩屋観音~松明峠(東山)

フリーマガジン『建築家プラス』で取材した「二川本陣資料館」を、下山後の立ち寄りスポットで掲載してまーす!

今日発売の『山と渓谷』は日本百低山が特集。そちらでは特集と巻末の連載(p210-211)に5山執筆しました。本屋で平積みされてそうなので、探してください!

【お仕事報告】夏発売の雑誌いろいろ

初夏からの雑誌、あげてなかった…!まとめ投稿します。

●『岳人』2024年7月号

北横岳、親子登山ルポに登場しました全国のモンベルショップでバックナンバーを手に取れます!主要都市なら必ずショップありますので探してください!

⇒ファミリー4人でがんばる様子が掲載されています。6ページで、私は原稿と構成、家族でモデルしています。今年小3になるお姉ちゃんが早くも登山を卒業しちゃったので、よっぽどゆるい散策しかもう付き合ってくれず(笑)4人の貴重な登山風景が記録できたので、この仕事ができてよかったです。

●『山と溪谷』2024年7月号

夏の日帰り山特集、2コース執筆

⇒今年はとくに暑かったですね…そんな中、日帰りで行ける夏山から「乙女渓谷(小秀山)」と「籾糠山」を担当しました。夏に行ったことあるけど、やっぱり暑いんですが。条件にコースタイム6時間以内とあって、ほとんど出せる山がないと愕然! 小秀山も山頂に行くなら6時間じゃ済まない。来年用に、今年撮影に行こうと思ったけど、天気が合わず結局ほとんどストック増やせず。まだギリ夏山間に合うかなぁ

●『PEAKS』2024年9月号

9月中旬まで本屋さんにあるはず!

⇒北アルプスの山小屋、約100軒をぜんぶ取材するというスタッフの総力特集になっていて、昨夏私も3泊かけて歩きました。担当したのは下記の小屋。撮影もよろしく!という仕事だったので、思い入れのある仕事になりました。このうち3つの小屋にはGWにもご挨拶できて、ビールやおでん、ソフトクリームをごちそうしていただいちゃいました♪

  • 涸沢ヒュッテ(2p)
  • 涸沢小屋(2p)
  • 穂高岳山荘(2p)
  • 岳沢小屋(1p)
  • 涸沢野営場(1p)

●『山と渓谷』2024年9月号

鈴鹿山脈の国見岳を紹介現在、発売中です!

⇒昨年から、登山の引率に加わらせてもらっている「登山部あさひ」(ガキ大将登山から改名)で同行した、鈴鹿山脈の国見岳のときの写真を使って原稿を書きました。特集は紅葉の名山ですが、私が書いたのは巻末の「季節の山歩き」という連載です。スリルを感じる山がテーマで、国見岳のゆるぎ岩を掲載(1ページ)。登山部あさひの羽原さんと畑中くんが小さく載っていますので、探してみてくださいこの夏は取材の打診はなかったけど、その分、年中の息子クンと乗鞍岳や木曽駒ケ岳にアタックできました。その前はお姉ちゃんも連れて、富士見台の萬岳荘に行って高度順化。さー息子クン、この次はどこ登ろうか?

「小さな家」視察ツアー

2024.3.20-21
日本建築家協会 東海支部 愛知地域会(JIA愛知)の住宅研究会が主体となって、住まいの原点を探ろう!というテーマで「小さな家」を視察してきました。まだ春が始まる前の、東京で! 編集に携わっている『建築家プラス』vol.4の次なるテーマは「住宅」に決まり、編集委員や住研メンバーの建築家さんたちとともに1泊2日で行きました。次号は幸子さんと私で分担して制作予定です。

「住宅」といっても、切り口はさまざま。毎号の企画では、建築家さんたちが集まって半年~1年くらいの時間をかけて、あーでもないこーでもないと意見交換をするのですが、会議室で話していても決まらないので、外に出るようにしています。今回は森さん中心に視察先をまとめていただき、

【1日目】
①ヒアシンスハウス(埼玉県)→②スミレアオイハウス(東京都)泊
【2日目】
②スミレアオイハウス→③カップマルタンの休暇小屋レプリカ(埼玉県)

3つの建物を見学しました。スミレアオイハウスは「9坪ハウス」のことで、今は一棟貸しの宿になり、1泊27000円で大人4人子ども2人まで宿泊できます。建築家設計の空間に泊まりで滞在できるのはおもしろい~! 正面のガラス窓は高所作業のように開閉するとか、間仕切りはほぼなくて2階から普通に落ちそうとか、建築家あるあるっぽい空間(笑)

建物はそれぞれ個性、趣がまったく異なり、ヒアシンスハウスは造作がとても美しくて、絵になる建物、空間でした。コルビュジエの小屋は、その中では異色だったかな。

そうした体験から、いい住空間、本来こうあってほしいと建築家が考えるような理想の空間について、皆さんで意見交換しました。まとまらないけど、私の印象に残ったことは、「小さなことでお施主さんはうだうだ文句言わないでほしい」(すべてがカンペキな空間なんてないんだよ、年月が経てば古くもなるし、掃除がしづらいことだってある、でもそういうことを最近あまり理解してもらえなくて)「高断熱高気密とか必要?本当に気持ちがいい空間ってなんだと思う?」(天井が高かったり吹き抜けだったり、窓が大きかったり、いいじゃん)「昔の職人さんはすごかった、昔の素材はよかった」(今はここまでやれる職人さん、大工さん、少ないよね、素材も手に入らないよね)……みたいな話題が出たような🤔もちろんそれだけじゃないんですけどね😅

建築家さんと本当に家づくりするなら、ある程度は施主のほうも懐の深さが必要な気がする。ていうか、そうじゃなかったら、建築家に頼む必要ってそもそもないよね?ってそれは言い過ぎ?(笑) 私はそんな印象を持ったけど、編集ではきっといい感じにまとまっていくと思いま~す。

東谷山親子ハイク実施しました

しだみ古墳ミュージアム
「東谷山で親子ハイクにちょうせん!」

4月下旬、一般を募ったハイキング教室の講師をしました。主催は名古屋市守山区にある「しだみゅー」です。ここは国指定史跡の「しだみ古墳群」があって、それを題材にした博物館が5年前くらいにオープンしています。

管理するエリア内に東谷山198mもあって、国指定の重要な古墳3基や、古墳の上に建つという全国でも珍しい神社(尾張戸神社)があります。今回はその山で、親子登山に挑戦しましょう!という企画でした。

しだみゅーには「子どもが楽しめる資料も作ります!」と見栄を張ったので(笑)A4二つ折りの資料、両面でイラストマップとビンゴカードになるものを制作。今回も我ながらよくできた(笑)山の地図を3Dっぽい鳥瞰図で描き起こすのは、簡単ではなくて、建築の実習で、模型作ったりパース描いたりした経験……絵心にプラスでそうした感性がいるかなと。「分かりやすい!」と喜んでもらえて、当日も地図を活用できたので、作ったかいがありました。

ハイキングはどうだったかというと、トラブルというものが全くなくて、とても完成度の高いイベントになったのではと、ホッとしました。参加親子は30名。東谷山に登ったことのある親子、まったく登山が初めての親子も、数組いました。時間が読めなかったけど、予定通り約2時間で下山完了! 参加した子どもたちがよく歩けていました。

地図にも入れた愛知用水に反応している親子が(笑)古墳もそうで、小3くらいの社会科でちょうど学ぶそうで、「タイムリー!」と好評。うちの小3は古墳を知らないから、住んでいる地域によって学ぶことが違うんだろうな~。

【告知】マリベ登山教室のご案内(6月)

お世話になっている「登山部あさひ」(安藤さん)のところで、マリベ企画の登山教室を開くことになりました! 6/4現在、募集中です◎ →6/8募集しめきり

マリベ登山教室のご案内(6月)

プチ冒険登山を企画します!
行き先は、白山の登山口、
石徹白(いとしろ)の近く
落差40mもある巨爆、
八反滝(はったんだき)‼️
「まるで日本じゃないみたい…!」
そんな驚きの景観を体感できます。
一般的な登山道がないため
渡渉(沢を渡ること)を繰り返し
草木をかき分けながら協力して進む、
初夏のアドベンチャーです。

■日程 2024年6月23日(日)
■ 行き先 石徹白川支流初河谷 八反滝
■ 集合 白山中居神社 9時30分
  docomo電波あり
 ※集合については後日メンバーで相談
  集合場所から現地まで車で15分移動

■ 募集 小学1年以上 20人程度
  基本は親子参加
  中学年以上は親以外の保護者とも参加可
  幼児は要相談

■ 活動 沢に沿って滝をめざすなかで
  膝下まで水に浸かる渡渉を6回します
  転倒したり流されたりしないよう
  大人が沢に立って
  子どもたちを安全に渡しましょう
  心の準備がないと怖いと思うので
  膝まで濡れるつもりでご参加ください
  詳細は参加者にあらためてご連絡します!

■ 内容 歩行3.5時間、休憩1時間 14時頃下山
  (往復3km、高低差250m)
  ※近くに温泉もあり

■ 装備 防水性のない普通の運動靴
   長袖長ズボン、帽子、手袋etc

■ 参加費 3500円/1人
■ 募集開始 6月1日(土)21時~

■ 申し込み メールやMessengerで受付中  →6/8募集しめきり
 宛先 teraimari★icloud.com (★を@に)
 件名「6月マリベ登山 申し込み」
  1.申し込み者のフルネーム
   (子どもは学年も)
  2.LINEの有無(あればID)を記載

■ お願い 年中のマリベ息子の同行を検討中
■ 問い合わせ マリベまでどうぞ!

※2024年5月下旬に現地の下見をしました
※写真は2020年6月下旬の様子です

【マリベ/寺井真理プロフィール】

登山専門誌『山と溪谷』『PEAKS』『岳人』で執筆する 山ママライター。 愛知県山岳スポーツクライミング連盟会員。 年間山行日数80日以上。低山から雪山、沢登り、アイスクライミングまで四季を通じてオールラウンドに山を楽しむ。愛知県出身在住。小3と年中の二児の母で、親子登山は100回以上を数える。豊田市を拠点に活動する「登山部あさひ」のサポートで、小学生の登山にも同行。

【マリベ登山教室では】

山登りという魅力的だけどちょっと危険もある遊びに挑戦したい方が、最初の一歩踏み出せたり、登山の楽しみを広げたりできるような企画をします😊 親子でも、子どもだけでも楽しめる、ただ歩くだけではない、マリベがおもしろい!と思う登山をそのときどきで提案します! ゆる登山から自然体験学習、冒険的な野外活動まで、毎回異なる活動をしますのでお楽しみに✨

普段の活動は、Instagramを参照

https://www.instagram.com/terastudio.maribe/

お会いできるのを楽しみにしています!

GW春合宿 前穂北尾根~奥穂高岳

昨秋に会の先輩と計画する予定だったけど、先輩が仕事で内臓にダメージを受ける大怪我をしてしまったために白紙となっていた。その後じょじょに復帰を始めた先輩と、初冬に御在所のヴィアフェラータ~富士見尾根に行き、岩登りの感覚をリハビリ、私はアイゼンで2ピッチリード。

1月と2月にはどちらも1泊で西穂高岳と将棊頭山~木曽駒ケ岳へ。内容は歩きの積雪期登山だけど、厳冬期というだけで活動が厳しく、寒さに耐える、装備の多さ、冬の生活技術、体力など……。西穂のほうは岩が露出しアイゼントレに最適な内容。木曽駒のほうは累積2100mの高低差に歩きは24kmもあり、どちらもアルプス3000m級の格別なものがあった。晴天だったので初めて一眼レフでの撮影にもトライできて満足した。

3・4月は自主トレで、さてGWどうしようかというときに、なんとなく前穂北尾根を再度提案してみると、まだ体調は万全ではないものの、小屋泊にする条件で話が進んだ。全日程で約束された晴天だったのが後押しとなったのは間違いない。

1日目涸沢ヒュッテ泊、2日目5峰~前穂北尾根~1峰~吊尾根~奥穂高岳~穂高岳山荘泊、3日目下山と計画通りに登ることができた。ただトレーニング不足は否めず、登攀の前夜は眠れないくらい緊張や不安があった。前穂北尾根は入門ルートと何を見ても書いてあるけど、冬靴でアイゼンを履いてピッケルをぶら下げながら登る状況は全然入門ではなく、何とか無事に終えられて安堵した。

ロープを出した3峰で、ハーケンベタ打ちのコーナーに先行者が進んだように思ったので、ピッケルでお助け紐を引き寄せてまで追いかけて登ったらそれは4級の(難しい)ルートだったという失敗をして凹んだり。もっと手前で「難しすぎる」と疑問に感じるべきだった。3峰の頂上に出る直前も冬装備では怖くて、「ほんとにこのルートで合ってる!?」と探すが代替のルートがなさそうで、覚悟を決めて突破した(先輩が)。2峰と1峰は疲労で体が重く、難しくないだろうけど気が抜けなかった。※前穂北尾根、夏にフラットシューズなら、もっと余裕があって登れるんだろうか!?

懸念だった吊尾根の縦走は、幸い夏道が8割以上出ていて危険箇所が格段に少なく、アイゼンを外して歩けたので体力も精神力も回復。時間は押しても不安感は和らいだ。後続にずっと横浜山の会の4人パーティがいて、恐ろしい穂高から小屋までのグサグサの雪壁も一緒に下った。最後に穂高岳山荘で笑って別れた。

ケガからの復帰となる先輩に、よく前穂北尾根OKしましたねと聞いたら「いつも見てるチャレアルの表紙のルートだから、行ってみたい気持ちもあったよ」とのこと。たしかに国内屈指の名ルートを残雪期に登れた達成感は大きかったけど、疲労なのか2週間以上体のどこかが痛くて、最近ようやく元に戻ってきた気がする